劇場に入るときたろうさんがいた
中山美穂さんと辻仁成氏の離婚問題にびっっくりしながらも、EXILEの新ユニットのネーミングがD-14というのにこれまたびっくりし、毎年買っていた空間除菌グッズの根拠のなさにがっかりした1日でしたが。
こないだの月曜日に観た、遊園地事業再生団という演劇ユニットを率いている宮沢章夫氏の座高円寺で絶賛上演中の「ヒネミの商人」講演後のアフタートークは半券を持っているのと観られるというので、いそいそと高円寺まで出かけたのであった。
入場口付近にシティボーイズのきたろう氏が談笑されていた。中村ゆうじ氏に会いにきたみたいでした。
アフタートーク出演者は、宮沢章夫氏は以前、京都造形芸術大学助教授をされており、映像・舞台芸術学科で教鞭をとられていた。その頃の教え子がいま舞台に出演されている牛尾千聖さんと山村麻由美さんだ。
牛尾さんは京都造形芸術大学に入ってなかったら、ピナ・バウシュ(ドイツのコンテンポラリーダンスの振付家)という人名を知らなかっただろうとのことでした。
ちなみに牛尾さんは演技だととても魅力的な声を出す身体能力の良い方だ。
この公演に関係ありませんが、そのピナ・バウシュ人名を久しぶりに聴いて、記憶をたどることにした。さいたま彩の国で公演された「船と共に」という作品は実際の砂や難破船を舞台上に使って圧倒的な世界観を描いていた。
2008年にパレルモパレルモを観たときの私のレビューを載せてみる。
ピナ・バウシュ ウッパタール舞踏団公演 「パレルモ、パレルモ」
@テアトロ ジーリオ ショウワ
コンテンポラリー・ダンスのピナ・バウシュの公演を観るのは、数年前にさいたま彩の国で観て以来2度目である。
今回の「パレルモ」は崩壊がテーマで公演が始まると巨大な壁がバタンと崩壊する。
ニューヨークのツインタワーの崩壊を想起してしまうので、深刻な内容なのかなと思っていたが、舞台が進むに連れ、ユニークでおもしろいパフォーマンスが連発するものであった。随所にお客さんの笑が起きていた。
総じて観ると、ピナさんの舞台はなんでもありで自由な空間だなと思った。
おもしろければオッケーみたいな演出されてるのかな。
同時に日本語のセリフもあり、それによって笑いが起きているのですが、翻訳された方も優秀だと思う。
以下、印象に残ったシーンを列挙する。
■M女トマトペースト
白人の女性が二人の男を手玉に取り、自分への求愛を求める。
「キス・ミー ここにキスして。
誰にも見られないように!
あっちへいって!
手をとって!
髪にさわって」
「ここにキスして。」って林檎さんじゃないんだから(笑)
そして二人の男性に交互にトマトペーストを投げつけられる女性。
あんたはM女か?(笑)
■ウエイトレス
黒人の女性ウエイトレスがMな女性からオーダーを聞く。
ウエイトレスはマスターカードじゃないと使えないよって言う(笑)
■犬の登場
この舞台で一番驚いたのがほんものの犬が瓦礫の中に登場して餌の入っているお皿から餌をペロリと食べると舞台からはけていった(笑)しかし食欲が治まらないのか、また舞台に出てくる。お客さんは笑っていた。
ピナさんは犬も演出するからすごいなと思った(笑)
その犬がかわいくて。犬飼いたくなりました。
■人間ポンプ
黒髪の泣いたような顔した女性が男性と連れ立ってくる。呼吸が苦しいのか男性が立ったまま人工呼吸のように女性の口に息を入れる。それを数回繰り返す。
物悲しい音楽と共にその黒髪の女性のソロダンス。
ダンスシーンでは一番印象に残った。
■イスラム教の青年
イスラム人とおぼしき男性が日本語でセリフを言う。おもしろい。
「イスラム教徒は石を持って旅に出ます。お祈りのときは、モスクがいります。石をこうならべると、ほら、モスクになってお祈りができます。
石、風、雨!みんな外国からきます。たぶんスカンジナヴィアから(笑)
休憩を挟んで前編、後編とあるのですが、休憩前には聴きなれない民族の音楽がかかり、そのビートにあわせてタイトに踊るダンサー達。かっこよくて休憩がなかなかできなかった。休憩と描かれたボードを掲げる一人のダンサー。
■ペットボトルで水泳
女性ダンサーがペットボトルを床に流すとそれを追うように床を這いながら泳ぐ一人のダ男性ダンサー。
■炭酸入りのペットボトル
炭酸入りのペットボトルを振り、いまにも吹きこぼれそうでしたが、スン止めにする女性ダンサー。一度やってみたい。
■カメラ女
日本人女性らしきダンサーが白人の男性に向かって「早く写真撮ってよ!グズグズしないでよ!早く撮ってよ!と連呼する。
その女性が写真を撮るときは男性ダンサーがその女性をくるりと一回転させ、その間にフラッシュが光る。そのタイミングがステキでした。
■女性ブリーフで倒立
女性ダンサー達が壁に向かって倒立した。
ガールズブリーフがステキでした(笑)
■林檎を投げる
女性ダンサーたちが舞台に背を向けて舞台の壁に向かって林檎を投げる。
その姿に人間の根源的な力を感じた。
■捨てる姿の綺麗さ
舞台上に男女数名のダンサーが横に並び日用品を捨てていく。捨てる姿も綺麗だなと思った。
■パスタ女
白人の女性ダンサーが茹でる前のパスタの束を抱えながら、「これは私のだから誰にもあげない。一本ずつ見せながら。これもこれも全てあたしのだから誰にもあげない」と言う。
そんなに喰いたきゃ、全部喰え!(笑)
■林檎を頭に乗せてユニゾンで踊る。
女性ダンサーたちが林檎を頭に乗せてワンピース姿でユニゾンで踊る。
綺麗なシーンでした。そして女性上位時代というか女性のパワーを感じた(笑)
■チャイコフスキーピアノ協奏曲第一番の一部が6台のピアノで演奏され、響きわたる。
最後のシーンでは造花かもしれないけど。桜の木が舞台上のブロックの上に置かれていた。
ピナ・バウシュは語る(パンフレットより)
「一人ひとりの活用されないままでいる大きな力。個性の異なる技術と才能をもった国籍の様々なダンサー達が共通の目的に向かって集まり、お互いに影響を与え合い、それを受けて自分自身の問いかけ、この社会の中で繋がりあえる希望ある世界を舞台の上で長年にわたり問い続けてきました。
私は、生まれながらに持っている自分自身の身体というものの大切さを感じます。
身体はその人そのものです。
私達は、ささいなことにも耐えられない弱さや、ことごとくに無力であるという不安、人間のこころの中に潜む尽きるこのない願望や怖れ、男女の求め合うこころや、しあわせへの希望などを再発見してダンスの形にします」
私が感じたのは先ほども書きましたが、非常に洗練されていながらも、人間の根源的なプリミティブな力も感じたのでした。
異文化理解という観点から見ると舞台上には国境がないと感じたのでした。
何度ものアンコールの後、ダンサー達の間にピナさん登場。黒いスーツでかっこよかった。
そして、観劇後、私は新百合ヶ丘のサティの中のレストランでライチサイダーを飲んだのであった。